本ページでは、中国拳法、中国武術、カンフーの種類について代表的な門派を紹介します。
中国武術は、どのように分類されるか?
まず中国武術は、どのように分類されるのか、その代表例を見てみましょう。
北派拳法と南派拳法
中国拳法の分類方法の一つに北派と南派という考え方があります。地理的に北方と南方の拳法という分け方です。
北派拳法の特徴としては、長拳を代表するように、動作が大きく伸び伸びとしていて、体全体を用いたダイナミックな技が多く、歩法も馬歩や弓歩のように広い歩幅を多用します。
北派拳法を代表するものとしては、太極拳、八卦掌、形意拳、少林拳、八極拳、螳螂拳、通背拳などがあります。
南派拳法の特徴としては、空手の三戦立ちのように内八の字の立ち方を使用する門派が多く、手技を多用した精密な動きを特徴としています。
南派拳法を代表するものとしては、詠春拳、白鶴拳、洪家拳などがあります。
ただし、形意拳のように比較的動作の小さい北派拳法もありますし、南派でも洪家拳のように馬歩や弓歩を使用する門派もあります。
内家拳と外家拳
本来の内家拳と外家拳の区別は、出家した拳=外家拳、それに対し在家の拳で内家拳という意味でしたが、現在では内功を重視した拳法を内家拳、外功を重視した拳法を外家拳と呼ぶようになりました。
内功とは一般的に、身体内面の操作法や意念、呼吸法をさします。
外功は、皮膚や筋骨といった身体の外側の鍛錬をさす事が多いです。
内家拳を代表する門派としては、内家三拳と呼ばれる 太極拳、八卦掌、形意拳のほか、意拳などがあります。
外家拳を代表する門派は、名前の由来通り、まず少林拳が挙げられますし、八極拳や螳螂拳、また南派は総体的に外功を重視するイメージがあります。
ただし、内功も外功も本来は各派に伝わっており、どのパーセンテージで練習するかは各派によります。
内功については、以下のページもご参考下さい。
太極拳
おそらく世界中でもっとも普及している中国武術が太極拳だと思います。
太極拳には、近年新しく制定された制定拳と代々伝わってきた伝統拳とがあり、伝統拳には陳派、楊派、呉派、武派、孫派などがあります。
太極拳の各派の特徴については、【太極拳の種類】のページで紹介しています。
太極拳の特徴
太極拳の特徴としては、まず内功を重視し、養生法と武術を一体化させている点があります。
また推手などの練習法にあるように近接間合いでの技術に優れている点が挙げられると思います。
太極拳の特徴について詳しくは、以下のページをご参考下さい。
八卦掌
八卦掌は、1800年代中期、清の皇族である粛親王(しゅくしんのう)府に宦官として仕えていた 董海川(とうかいせん)が創始したと言われています。
董海川以降の伝承者により、一般にも普及し始めましたが、各派の特徴の違いが大きく、尹派、程派、宋派など各派の八卦掌に分かれて伝承されています。
当会で指導している八卦掌の種類に関しては、以下のページをご覧下さい。
八卦掌の特徴
八卦掌の特徴としては、まず走圏という円周上を歩く練習法が挙げられます。
穿掌や撞掌など、掌を中心とした技法が多用されるため、八卦拳ではなく八卦掌と呼ばれています。
八卦掌の特徴について詳しくは、以下のページをご参考下さい。
形意拳
形意拳は、槍の達人であった姫際可(きさいか)が創始したと伝えられています。
後に李洛能(りらくのう)によって整理され、五行拳や十二形拳を母体とした現在の形意拳の体系となりました。
郭雲深、尚雲祥、孫禄堂、李存義など幾多の名人を排出した門派としても有名です。
形意拳の特徴
形意拳の特徴としては、三体式を重視し、その打突が強力な点が挙げられます。
北派拳法の中では、動作がコンパクトで短打を多用するイメージがあります。
「シンプルでありながら、深い」そういった拳法だと思います。
私個人は、幾度が形意拳を学ぶ機会がありましたが、太極拳や八卦掌のように深く探求するまでは至りませんでした(^_^.)
形意拳については、以下の書籍に詳しいです。
当時の形意拳、八卦掌、太極拳の名人の逸話がどっさりです。
少林拳
少林拳は、文字通り「少林寺」を発祥とした徒手拳術です。仏教では、殺傷が禁止されているため、刃物を用いない素手と棍の技術が発展しました。
ちなみに日本の少林寺拳法と少林拳は、まったく別の練習体系で、技術的な関連はありません。
また少林寺周辺の武術学校で指導されている少林拳と、民間に伝わる古流の少林拳では、ずいぶんと風格も異なるようです。
古伝の少林拳に関しては、以下のDVDで、少林拳同盟会の川口賢師範が解説されています。
ハ極拳
八極拳は、河北省滄州孟村の回族(イスラム教徒)を発祥とされています。その後、羅疃へと伝わり、漢族系の八極拳の伝承もあります。
八極拳の特徴は、やはり打突の威力が大きく、肘打ちや体当たりなどの近接間合いでの技法を得意としています。
日本へは、故松田隆智氏の書籍や漫画によって認知され、李書文系の台湾や長春へ伝わったもの、また回族孟村の呉氏八極拳などが伝わっています。
私個人は、八極拳を練習している方々と幾度か交流した事がありますが、やはり体の剛健さを感じました。
豊富な練習体系を有する長春八極拳を伝える李英老師
螳螂拳
実戦派として知られる螳螂拳も地理的に北派と南派に分かれます。
また北派の中でも、動作がやや直線的で連続攻撃を重視する七星派や太極梅花派と、立円動作が多い六合派などに分かれます。
螳螂とはカマキリの事ですが、古流の螳螂拳はあまりカマキリっぽくないです(^_^.)
螳螂拳に関しては、以下の書籍が大変詳しいです。
螳螂拳の歴史書に留まらず、近代中国武術の歴史を知りたい方は必読の書だと思います。
通背拳
通背拳は、猿の動きを基に考案されたとの説があります。また通背の名称通り、背中で発生させた力を腕へ通すといった意味もあるようです。
通背拳も螳螂拳と同じく連打速攻のイメージがありますが、螳螂拳と比べると、腕を鞭のように使う特徴があります。
また形意拳と同じく五つの基本技法(五行掌)を徹底的に練る点も特徴です。
伝統の通背拳を今に伝える常松勝老師
詠春拳
詠春拳は、空手の剛柔流や上地流と同じく内八字の立ち方(二字拑羊馬)を基本とし、小念頭、尋橋、標指の三つの型があります。
非常に緻密な手法を用いると共に連打も詠春拳の特徴です。
ブルースリーが学んだ拳法として、知る人ぞ知る拳法でしたが、近年、映画「葉問(イップマン)」のヒットによって再注目されているようです。
日中戦争の際、日本軍の侵略によって、イップマンは財産や家族を失い、香港に逃れたと聞きます。
その影響で、葉問系では、日本人には教えないといった風潮がありましたが、近年では欧米経由などで学んだ指導者によって、日本でも指導されているようです。
ただし、他の拳法の要素を取り入れている場合も多く、純粋な詠春拳を学べる機会は、現在でも難しいかもしれません。
詠春拳関連の書籍は、以前BABジャパンから以下の書籍が発売されていましたが、現在は絶版となり、中古でもかなり高額となっているようです。
改訂版も、かなりお高い(^_^.)
白鶴拳
白鶴拳は鶴の動きを模倣した拳法と言われ、中国南部の福建省を中心に発展しました。対岸である台湾にも多くの練習者がいます。
同様の経緯で沖縄へも伝わり、那覇手の源流とする説もあります。
白鶴拳も形意拳や通背拳と同じように五行手(金形手、木形手、水形手、火形手、土形手)と呼ばれる五つの基本技法を徹底的に練り、攻防の基本とします。
白鶴拳に関しては、福昌堂より以下の書籍が発売されていましたが、現在は絶版となり中古本のみ購入可能です。
洪家拳
洪家拳は、洪さんの家の拳という意味で、海外では洪拳と呼ばれる事が多い。
日本ではあまり知られていませんが、南派を代表する拳法の一つです。
詠春拳や白鶴拳と比べると、馬歩や弓歩も使用し、北派拳法的な一面も垣間見れます。
洪家拳の練習体系については、以下のDVDで紹介されています。
まとめ
今回は、中国拳法、中国武術、カンフーの種類について、代表的な門派を紹介してみましたがいかがだったでしょうか?
私自身が学んでいない門派は、各派の第一人者の書籍やDVDを紹介させて頂きました。
中国の拳法は非常に多様であり、厳密な分類は困難と言えます。また、拳法の名前やスタイルは地域や流派によって異なる場合もあります。
また各派の特徴は、あくまで私個人の私見であり、各派を代表するものではありませんので、興味を持った方は、ぜひ各派の道場を自分の目で直接見てみて下さい。
本ページの内容と関連が深い以下のページもご参考下さい。
当会で指導している中国武器術を中心に中国の兵器類を紹介しています。
中国武術(太極拳や八卦掌)で使用される手型とその使用法や変化技法までを以下のページで紹介しています。
中国拳法の代表的な蹴り技について紹介しています。
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普段の練習内容は、【練習風景】のページをご覧下さい。
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