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太極拳の本質、内功について

太極拳の本質、内功とは?のロゴ

皆さんは、太極拳の内功についてご存知でしょうか?

もし、あなたが太極拳の型を少しだけ学べれば良いと考えているのであれば、内功についての知識は必要ないかもしれません。

ただし、あなたが太極拳の本質まで学びたいとか、武術として学びたいという事であれば、内功の意味について知る必要があるでしょう。

なぜなら、太極拳をはじめ、八卦掌などの内家拳は、本質的には内功がすべてと言っても過言ではないからです。

内功のない太極拳は、もはや太極拳とは言えないかもしれません。

今回は、太極拳の本質である【内功について】考えてみたいと思います。

太極拳の外形と内形

内功についてお話する前に、まず外形と内形について、お話したいと思います。

外形というのは、文字通り、外見の形です。見たままの形と言って良いと思います。

車で言えば、見たままのボディです。

車の写真
車の外形は、箱型

それに対して、内形というのは、内面の形。言い換えれば、内面的な骨格の事です。

車であれば、フレームだったり、タイヤだったり、最低限、その状態を維持できる部品が揃った状態です。

車の車内のイラスト
車内から見れば、フレームなどの車体の骨格が目に付く

ちなみに、自転車の場合は、外形がそのまま内形という事になります。

自転車のシルエット画像
自転車の場合は、外形がそのまま内形となる。

太極拳の内形とは?

では、太極拳にとっての内形とは、どのようなものでしょうか?

単純に人体の骨格かというと、そうではありません。

太極拳の場合には站樁。八卦掌には走圏という練習方法があります。

太極拳の站樁(タントウ)の写真
太極拳の站樁(たんとう)

站樁の場合は、定位置で止まったまま、走圏の場合は、歩きながらですが、どちらも上体は不動で同じ姿勢を維持したまま行います。

八卦掌の走圏
八卦掌の走圏(そうけん)

これらの練習は、いったい何のために行っているのでしょうか?

站樁や走圏には、様々な意味がありますが、初心者のうちにもっとも重視するのは、武術を行うための骨格(骨組み・内形)を作る事です。

武術を行うための骨格は、本来の骨格を基にしますが、伸筋抜骨といって、身体の各関節を開いて、筋(すじ)を伸ばし、全身をつなげ、より明確に使用できるようにしていきます。

八卦掌の順勢掌
八卦掌による伸筋抜骨

シルエットにすると、イメージを掴みやすいかもしれません。

カンフーポーズのシルエット

外形と内形を一致させる

では、どのように内形(内側の骨格)を作っていけば、良いのでしょうか?

その答えが站樁や走圏にあります。

内側を整えるためには、外形を整えて、内外を一致させていくしかありません。

そのために、站樁を組み、走圏を行う際に、先生に姿勢を修正してもらう訳です。

伝統的な門派ほど、站樁や走圏に時間をかけるのは、そのためです。

このように、伝統の太極拳や八卦掌では、站樁や走圏の練習により、内外を合一させ、武術の動きをするのに必要な【内形】を形成していきます。

今回は内形(骨格)について紹介しましたが、外形(型枠)も非常に重要な意味があります。説明は後述します。

太極拳の内功とは?

では次に、太極拳の内功の意味について説明し、具体的にどのように内功を身に付けていくのかを説明していきたいと思います。

太極拳の内功とは、上述した内形(武術としての骨格)を身体の内面の動きを使って操作する事を言います。

内功は大別すると3種類あり、またこれらの内功は、実際には密接に連動します。

3種類の内功
  1. 動力源としての内功
  2. 動力を直接的に伝達する仕組み
  3. 旋回運動により、方向を転換する仕組み

(1)動力源としての内功

動力源としての内功は、車で言えば、エンジンという事になります。自転車の場合は、ペダルを漕ぐ脚力という事になるでしょう。

太極拳の動力源として、エンジンのをイメージするイラスト
動力源としての内功は、車で言えば、エンジンにあたる

車のエンジンは、 シリンダー内で、吸気→圧縮→燃焼→排気 といった4つのサイクルを繰り返し行う事によって、動力(圧力、爆発力)を作ります。

実は太極拳の場合も、身体内(特に腹腔内)を膨張させたり、圧縮させたり(折畳)して、ほぼ同様の方法で圧力を形成します。

起勢(チーシー)動画

動力源としての内功を養成する起勢

動力源としての内功を形成する、もっとも基礎的な練功法は、起勢です。

起勢は、太極拳の套路(型)の一番最初に出てくる動作です。

太極拳を学んでいる方であれば、どなたでも知っていると思います。

ただ、色々な方の起勢を見ていて思うのは、膨張はできているのですが、圧縮ではなく、収縮してしまっている方がほとんどだと思います。

収縮して(しぼんで)しまうと、太極拳に必要な圧力を体内で発生させる事ができず、文字通り形だけ(からっぽ)という事となります。

また起勢では、圧力を発生させるだけでなく、下方への按勁(抑える力)の養成が求められます。

動画を見て頂くと、私が何かを吸い上げていたり、圧しているのは感じて頂けると思います。

言葉で説明すると簡単なようですが、実際には極限の膨張と圧縮を行えるよう、身体の機能を時間をかけて改善していく必要があります。

白猿献果(はくえんけんか)

太極拳の基本功を練習する写真
太極拳の基本功 白猿献果

当会の基本功である【白猿献果】は、起勢の発展形となる練功法です。

起勢で得た、折畳の仕組み(内功)をより拡大させ、武功としての練習法となります。

下按のみでなく、防御法としての圏手、また上方への挑勁を養成します。

太極拳の基本技法である白猿献果による打法

(2)動力源を直接的に伝達する内功

では、次に伝達経路としての内功について説明してみたいと思います。

車の場合は、エンジンで発生させた動力を、まずベルトにつなぎ、そこから様々なギアやシャフトを通じて、タイヤに伝達していきます。

機械の歯車のイラスト
様々な歯車の組み合わせによって力を伝達する

自転車の場合は、ペダルを漕いだ力をチェーンを通じて、同じくタイヤへと伝達します。

太極拳の場合も、(1)で発生させた動力を、身体の末端(主として手先)へ伝達させる仕組みを身体の中に作っていきます。

根幹的な仕組みとしては、まず(1)で発生させた動力を上下や前後、あるいは開合動作など、内形と内功を直接的に連動させる仕組みを作っていきます。

いわゆる太極拳の基本功を習得していく段階です。

この段階では、前述した内形(骨組み)を直接的に操作する感じです。

青龍探爪(せいりゅうたんそう)動画

太極拳の基本功である青龍探爪の写真
青龍探爪(双按)の落式

青龍探爪(双按)の落式は、少林拳の型などでもよく見かけますが、太極拳の場合は、起勢や白猿献果などで生じた圧力を前方へと運ぶための基本功です。

下按を前按へと変換するための練功法と言えるでしょう。

青龍探爪(双按)の動画

青龍探爪(双按)の外見はシンプルですが、内面では非常に複雑な作業をしています。

ちなみに動画を見ると、身体を波立たせているように見えますが、真似して波立つように行うのはNGです。

外見を真似してごまかすのではなく、何万回といった練習を積み重ねる事によって、現実的に前方へと力を按出する仕組みを作っていきます

基本功の青龍探爪の仕組み(内功)を歩法を用いて前方へ運ぶと、楊式太極拳の如封似閉(双按)となります。

楊式太極拳 如封似閉(双按)

前述した外形(鋳型)に身体を当てはめ、身体内で生じさせた力を、一切ロスさせる事なく行います

穏やかな外見とは裏腹に、非常にきつい練習法です。

この段階の練習方法は、大鵬展翅(開合)や托天掌(体側面での上下)、十字脚などがあります。

また、発展形となる練習法がいくつもありますが、別の機会に紹介したいと思います。

(3)旋回運動により、方向転換する内功

3つ目は、(1)や(2)で発生させた動力を旋回運動により、方向を変える仕組みです。

力の方向を変える方法自体は、大別すると、2種類あり、一つは、伝達させる仕組みは、(2)のままで、歩法によって進行方向を変えるものです。

車で言えば、エンジンからタイヤへと力が伝達する仕組みは変わらず、ハンドルを回す事で、前輪のタイヤの向きが変わり、直線するだけでなく、右折したり左折したりする事ができます。

車の運転席の写真
車のハンドルを回す事により、右折や左折が可能

太極拳の場合も、前方へと進む上歩や後退する下歩、斜めやジグザグに進む三角歩や斜行歩などがあり、基本的な力の伝達構造(勁道)は、そのままで、歩法によって方向を変えます。

ジグザグに進む形意拳の虎形楊式太極拳の摟膝拗歩をイメージすると、分かりやすいかもしれません。

八卦掌の単換掌も、初期段階では扣擺歩によって、方向を変えますので、同様の原理と言えます。

八卦掌の単換掌の写真
馬貴派八卦掌 単換掌

これに対して、もう一つは、身体内で旋回運動を行うものです。

少し詳しく説明すると、工事現場などでシャベルカーが土を掘ったり、トラックの荷台に土を運んだりするのを見た事があると思います。

シャベルカーがアームを伸ばし、つ土を掘る写真

シャベルカーの動力源も(1)のエンジンです。

エンジンで生じたエネルギーを油圧を通して、アームを伸ばしたり、上下したり、スコップを動かしている仕組みが(2)となります。

当会の基本功で言えば、それぞれの動作を単独で行うのが一元、これらの動作を組み合わせたものが二元の功法となります。

特に土を掘る際のアームを伸ばして、土を掘り、手前に引き寄せてくる動作は、二元の黄龍出水にそっくりですね。

シャベルカーがトラックの荷台へ、車体を旋回させて、土を運ぶ写真

次に、掘り出した土を車体を旋回させて、トラックの荷台に運ぶ動作が(3)の旋回する仕組みとなります。

当会で言えば、三元の功法となります。

太極拳の動作で言えば、単鞭の動作に良く特徴が出ています。

動画で見てみましょう。

楊式太極拳 単鞭

下から集めてきた力を、一旦右手に運び、体を旋転させながら、左手に力を運んでいます。

勾手の形がスコップに似ていますし、ある意味、シャベルカーそのものですね。

続いて、同一の原理を表現している楊式太極拳の野馬分鬃の動作も見てみましょう。

楊式太極拳 野馬分鬃

野馬分鬃の場合は、開合の開く力が根底にあり、開く力を旋回運動によって運んでいます。

この旋回運動も、大別すると平円と立円があり、野馬分鬃の場合は主として平円を、単鞭の場合は立円を主体としています。

このように、太極拳の技法というのは、今回紹介した3つの内功を組み合わせて、内面的には非常に複雑な動きを要求されます。

言ってみれば、中級者用の練習方法と言えるでしょう。

また、これらの内功を組み合わせた上で、ドリル上の動きに転換したものを纏絲勁(てんしけい)と言います。

右掌へと纏絲勁を伝える陳氏太極拳 懶扎衣

ここまで説明した通り、内功というのは、神秘的なものではなく、一言で言えば、身体を機械化する仕組みの事を言います。

その仕組みの構造が、外見からは見ても分かりませんし、基本的には人を選んで教えるので、一般的には神秘的に見えてしまうのでしょうね。

また当然ですが、その仕組みを学んでも、活用できるまでには、長い練功期間が必要となります。

当会の場合は、(1)の動力源や(2)の直接的な伝達の仕組みは、一元や二元の基本功にまとめられていますし、(3)に当たる部分は、三元~五元の功法となっています。

ただし、より効力を高める功法については、やはり人を選んで指導しています。

套路を学ぶだけでは、外見上を真似する事はできるかもしれませんが、功法については、やはり、それが伝わっている門派でなければ、習得は難しいように思います。

当会の樁功や基本功についての概要は、こちら のページでも紹介しています。

内功を身に付ける事で何が可能になるのか?

陳式太極拳 演手捶の写真

では、この内功を身に付ける事で具体的に何が可能になるのかを紹介していきましょう。

  1. 内功による瞬発力の習得
  2. 内功を用いた上下や左右への切り返し
  3. 内功を用いた連撃
  4. 内功による化勁
  5. 攻防一体の実現(線撃)
  6. 健康面の充実

順に説明していきましょう。

内功による瞬発力の習得

身体内の様々な部位が噛み合うようになれば、内功による瞬発力を発する事ができるようになります。

内功による瞬発力の特徴は、全く予備動作を必要としない事です。

一般的には【発勁】と呼ばれているようです。

ただし、一般的な陳式太極拳の表演などで行われている発勁と、当会の【内功による瞬発力】は、若干ニュアンスが違うように感じています。

その理由は、一般的には、套路の動作のまま発するようですが、当会の場合は、套路の動きと実際の技法の動きが異なるからだと思います。

内功そのものを動かした動作=技の動きとなる

内功による瞬発力を用いた技法をいくつか紹介しましょう。

楊式太極拳 双按(動画)

前述した基本功 青龍探爪(太極拳の双按にあたる)による瞬発力

内功による瞬発力を発する場合は、ブレーキを踏んだ状態で、アクセルをふかしていき、一瞬だけブレーキ外し、再び急ブレーキをかけるような意念を用います。

感覚が身に付けば、意識だけで発する事も可能となります。

陳式太極拳 懶扎衣(動画)

続いて、陳式太極拳の第一手、懶扎衣の発勁動作を紹介しましょう。

内功によって生じた纏絲勁を右掌へと伝達した技法が懶扎衣です。

套路(型)で、身体を動かす仕組み(内功)を作り、内功により、勁を発したものが発勁となります。

懶扎衣の習得は、太極拳修行者の必須項目となります。

懶扎衣の詳細は、こちらのページをご覧下さい。

陳式太極拳の六封四閉(撞掌と切掌)

六封四閉は、相手の両手を封じた上で、投げ技や推撃(押し技)として紹介される事が多いですが、今回は六封四閉の撞掌と切掌を紹介します。

懶扎衣の発展形である六封四閉の撞掌

六封四閉を用いた撞掌は、身体を膨張→圧縮させつつ打つ、非常に強烈な打法となります。

陳式太極拳の六封四閉(切掌)

六封四閉を用いた切掌は、身体を圧縮させる力と共に纏絲勁を用いて手刀部を打ち込みます。

相手の肝臓を狙い、太極拳式のレバーブローとも言えます。

威力と速度を混在した打法です。

六封四閉(ろくふうしへい)については、こちら のページで詳しく解説しています。

陳式太極拳 演手捶(動画)

続いて、陳式太極拳の代表的な突き技である演手捶を紹介します。

内功による瞬発力を用いた陳式太極拳 演手捶

双按と同様に、まったく予備動作を必要としていないのが分かると思います。

次に内功による瞬発力を用いた演手捶の拗歩捶(逆突き)と順歩捶(順突き)をスーパースロー再生で見てみましょう。

演手捶(拗歩捶)のスーパースロー再生

スーパースローで見ると、拳が射出されている間、外見上は、身体がほぼ静止しているのが分かると思います。

身体は捻じらす、腰も入れていませんから、表面上は、手打ちのように見えます。

ただし、ただの手打ちではない事は、一般の方でも感じて頂けるのではないでしょうか。

身体内面では、纏絲勁を生じさせ、拗歩捶では、合勁(開合の合わせる力)を用いて打ち込みます。

演手捶(順歩捶)のスーパースロー再生

分別上、拗歩ではないので順歩捶としていますが、内功が噛み合ってくれば、順歩や拗歩といった区別は無くなります。

順歩捶では、意識の発動と共に拳が射出され、身体は相手に吸い込まれるように引っ張られていきます。

感覚的には、相手に当ててから、体が引っ張られていく感じです。

進歩(後ろ足を前に差し出す歩法)は、身体を止めるために行っているようなものです。

一般的な陳式太極拳の発勁とは、だいぶ感覚が違うのが見受けられると思います。

陳式太極拳 単鞭(動画)

最後に、陳式太極拳の単鞭の套路と内功による瞬発力も見比べてみましょう。

陳式太極拳 単鞭の套路の動き

陳式太極拳の単鞭は、先に紹介した楊式太極拳の単鞭と比べると、より開勁を重視し、落式では身体を緩め沈勁を使用します。

では、単鞭の内功による瞬発力を見てみましょう。

陳式太極拳 単鞭の技法

套路の動きでは、身体を大きく開いて使いますが、実用時は開こうとする力を、あえて開かせずに、ほぼ直線の軌道を通ります。

太極拳式のジャブと言っても良いかもしれません。

ただし、単鞭の場合は、発してから当てるというよりは、当ててから発するような感覚です。

この動画では、最短で相手に届かせるように、速さ重視で発していますが、逆に重さを載せるような打ち方をする場合もあります。

単鞭について詳しくは、こちら のページをご覧下さい。

内功による瞬発力は、内功ができていないと、腰などを痛める可能性があるので、安易に真似をしないで下さい。

このように、套路(型)では、身体を動かす仕組み(内功)を作り、内功そのものを動かしたものが技となります。

武術として太極拳を学ぶ場合は、この段階は、一つ一つの技法を【実際に使える武器】として習得していく段階と言えます。

内功を用いた上下や左右への切り返し

続いては、内功による切り返し動作を紹介しましょう。

この切り返し動作による打撃は、当門独自のものかもしれませんが、これまで紹介していきた内功による仕組みを軌道の途中で巻き戻したり、逆回転させる事で可能となります。

また瞬発力を用いる事で、一挙動での2~3動作の連撃といった事も可能です。

格闘技的に言えば、コンビネーションという事になりますが、太極拳の場合は一挙動、一つの動作の起こりの中で、2~3手をほぼ同時に行います。

上下の切り返し(金剛搗碓)

陳式太極拳の金剛搗碓の用法例

ここでは、右撩陰掌から、右翻捶(裏拳打ち)への上下の切り返しを行っています。

内面では、右撩陰掌を打っている途中で、ギアをバックギアに入れ、巻き戻しながら急加速させているような感じです。

スローで見ると以下のようになります。

金剛搗碓の用法例(スロー再生)

左右の切り返し(雲手)

太極拳 雲手

雲手による左右の切り返しは、左雲手の軌道の途中で、右雲手へのギアもつなぐ感じでしょうか。

1,2と左、右で打つのではなくて、大きな1の途中で、2のギアにつなぐ感じです。

結果としては、一挙動となります。

動画では、かなりデフォルメして表現していますが、実用時の動きは、もっと小さく、ほぼ時間差のない状態で発します。

別に左右の相手を倒すという事にこだわらず、ボクシングのワンツーのように、一人の相手を左右から挟み打つ場合もあります。

教室が再開したので、雲手も撮り直してきました。

太極拳 雲手 挟み撃ち

久しぶりに自分の雲手を見てみましたが、私自身の雲手は、もう内功そのもので動いているので、初心者の方は真似しないほうが良いと思います。

内功そのものの動きになると、良くも悪くも個性といったものが出てきます。

その個性を真似しても、動く仕組み自体が各個人で違う訳ですから、初心者のうちは、型通りの雲手の練習をしましょう。

ちなみに、速く動いている時は、指先で突いているように見えますが、実際には、右 → 左と手刀部で挟むように打っています。

太極拳の右雲手の写真です。
太極拳 右雲手
太極拳の雲手の写真です。
太極拳 左雲手

また、右の雲手の中から、左の雲手が生じるのが、この打法の特徴です。

今回は、切り返し動作のみ紹介していますが、実際には太極拳の套路に含まれる様々な技法を組み合わせて行う事が可能です。

ただし、内功を伴っていないと、単なる手わざとなってしまうため、注意が必要です。

切り返しを用いた技法は、他にいくつもありますが、詳しくは、【太極拳の実用性の研究】のページをご覧下さい。

内功を用いた連撃

内功による連撃を紹介しましょう。

この段階となると、套路そのものよりも、套路で得た仕組み(内功)を応用していく段階と言えると思います。

六封四閉による連撃

前述した陳式太極拳の六封四閉を応用した連撃です。

相手に何らかの打撃が当たり、相手が崩れた瞬間に用いる連打です。

何連打しているか、数えてみて下さい。

実際には、この連打の仕組みを用い、上下に打ち分けて打つ事も可能です。

演手捶を用いた二段打ち

同じく前述した演手捶を応用した二段打ちです。

一打目で相手のガードを固めさせ、相手のガードが緩んだ瞬間に二打目の演手捶を打ち込みます。

手でチョンチョンと突いているように見えますが、スーパースロー再生で見ると、二打目もしっかりと打ち込んでいるのが分かると思います。

陳式太極拳 演手捶 二段打ち(スーパースロー再生)

内功による化勁

太極拳の推手の写真
太極拳の推手

化勁についても、一言で言えば、やはり内功で行うという事になるでしょう。

化勁には大別すると、「出」(ポン)と「引」(リー)の2種がありますが、いずれにしても纏絲勁を用い、相手に吸着しながら、相手に力の方向を見失わせる技術です。

人間は相手(対象物)との接点を通じ、押されたら押し返しますし、引かれたら引き返します。

それは力の方向が分かっているからです。

それに対し、太極拳の化勁をかけられると、見た目接点を通じて感じる力の方向に差異を感じ、どの方向に力を出して良いのかが分からなくなります。

言ってみれば、脳がパニックを起こしている状態だと言えます。

観察してみると、ある程度の力を出したまま、どの方向に力を出して良いのかが分からず、身体が硬直してしまうようです。

この状態から、大きく崩す事もできますが、太極拳の本質を言えば、相手をこの状態に維持させたまま、上記で紹介した連撃の渦に巻き込んでしまう戦術を特徴としています。

推手や対練を行っていると、こちらの動きは止められてしまうのに、相手の動きは止められずに押し込まれてしまう事があると思います。

そういった方は、感覚的に化勁を身に付けてらっしゃるのでしょうね。

残念ながら、化勁に関しては写真や映像で表現しても、体感して頂かないと、分からないと思いますので、実際に学びに来て頂くしかないですね。

攻防一体の実現(線撃)

武術の理想としては、攻防一体で相手の動きを制御しながら、一方的に相手を征するところにあるのだと思います。

もちろん太極拳もそれを目指しますが、実際には相手もこちらを倒しに来る訳ですし、抵抗もする訳ですから、難しいですよね。

当門の場合は、前述した化勁を用いる事によって、相手の動きを一時的に停止させ、そのまま攻防一体の動きに巻き込んでしまう戦術を一つの柱としています。

人間は、押されたら押し返す、引かれたら引き返すといったように、相手の力の方向が分かっていれば、抵抗しようとします。

これが、【化勁】をかけられてしまうと、一時的にですが、力の方向を見失う事になります。

観察してみると、ある程度力を出している状態で、全身が固まってしまう感じです。

なぜ、そうなるのかと言うと、力の方向性を失う事によって、一時的に脳がパニックを起こし、どの方向に力を出して良いのか、分からなくなるからだと思います。

太極拳の場合は、その瞬間にこちらの技の中に巻き込んでいきます。

太極拳 攬雀尾ポン勢の写真
相手の攻撃をポン勢で受ける。

上の写真は、相手の攻撃をポン勢で受ける、あるいは自分から仕掛けた状態です。

この接触時に相手に化勁をかけると、相手は一時的に方向性を見失います。

陳式太極拳 六封四閉の写真
左手にバトンを渡し、右切掌

化勁をかけた状態を維持したまま、左手にバトンを渡し、右切掌(六封四閉)を打ちます。

陳式太極拳 乱扎衣の写真
そのまま切り返して、右乱扎衣へとつなげる。

相手が右切掌に反応した瞬間、相手の左手を制御し、そのまま上に切り返して、右乱扎衣へとつなげます。

動画にすると、以下のようになります。

陳式太極拳 乱扎衣の用法例

太極拳の実用時の動きが速いというのもありますが、相手は何が起きたのか分かっていない状態なのは感じると思います。

(上記の動画は、一度だけだと、分かり辛いので、同じ動画を二度つなげています)

ゆっくりと動くと、このような感じになります。

いずれにしても、単なる速さだけでなく、化勁によって相手の動きを一時的に封じたり、崩した上で行います。

最後に、同じ技法を一人で練習している動画も紹介しましょう。

この動画では、ポン勢で仕掛けた後に六封四閉(切掌)→ 乱扎衣へと繋げています。

一人稽古だと、線撃の文字通り、身体全体で一本の線を描いているのが分かると思います。

健康面の充実

ここまでは、内功を身に付ける事によって、武術的にどのような効果があるのかについて紹介してきましたが、最後に健康面について紹介したいと思います。

太極拳を学んでいる、ほとんどの方が健康法として太極拳を学んでいるのだと思います。

ただし、内功を伴わずに太極拳の型を練習していても、実際にはあまり効果が無いようにも思います。

理由は、内形や内功という概念が伴っていなければ、身体が変わっていかないからです。

身体が変わっていかなければ、太極拳はただゆっくりと拳法の型を行っているだけです。

それだけでは、多少足腰が強くなるとか、運動をしたという満足感しか得られないでしょう。

それに対し、まず内形や内功といった概念を持ち、身体を変えていく事を目的とするならば、一般的な運動では動かせない部分から体が動かせるようになっていきますし、功が進むことによって、明らかに力の概念といったものも変わっていくと思います。

その段階に至って、健康法にしろ、武術として行うにしろ、初めて太極拳を活用できるようになります。

内功を身に付ける最大のメリットは?

今回は、太極拳の本質である【内功について】を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

最後に内功を身に付ける最大のメリットについて、お伝えしましょう。

内功とは、【身体を動かす仕組み】と紹介しました。

仕組みである以上は、その仕組みを作ってさえしまえば、無くなることはないという事です。

体力や気力と言ったものは、やはり年齢と共に衰えていくと思います。

私の場合も40代の半ばを過ぎたあたりで、急激な衰えを感じました。

気力や体力が無くなるのであれば、あとは技術という事になるでしょう?

不思議なもので、その頃を境にそれまで養ってきたものが、つながり、噛み合って、内功といったものが少しずつ理解できるようになりました。

体力や力があるうちは、それでどうにかなってしまうので、なかなか気持ちを切り替えられないのでしょうね。

また内功が理解できるようになった事で、実際の太極拳の技戦略、戦術といったものも見えてきました。

内家拳の芽

楊式太極拳 攬雀尾の画像
楊式太極拳 攬雀尾

当会で指導している練習体系を教えてくれた先生が、「内家拳というのは、芽が出るかどうかが一番大事。」と、昔よく仰っていました。

「芽が出なければ、形だけ。」とも、よく言われていました。

最初は先生の形を真似るところから入る訳ですが、いつまでも、それだけではいけないという意味だと思います。

外形を真似るところから、内形を形成し、そこから内功によって動けるようにしていく。

内功といったものは、より細分化される事で、動きが進化していきますし、思考も活性化していきます。

そこから、発想が生まれ、試行錯誤ができるようになります。

ここからが本当の意味での練習の始まりなのかもしれません。

今後も当会は、この内功にこだわった体系を練習していきたいと思ってます。

当会に興味を持たれた方は、【湧泉会の特徴】のページも、併せてご覧下さい。

参考記事

内功については、旧HPの【内功について】のページも併せてお読み下さい。現在とは少し考え方が違うと思います。

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