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太極拳の本質、内功について

太極拳の本質、内功とは?のロゴ

皆さんは、太極拳の内功についてご存知でしょうか?

もし、あなたが太極拳の型を少しだけ学べれば良いと考えているのであれば、内功についての知識は必要ないかもしれません。

ただし、あなたが太極拳の本質まで学びたいとか、武術として学びたいという事であれば、内功について知る必要があるでしょう。

なぜなら、太極拳をはじめ、八卦掌などの内家拳は、本質的には内功がすべてと言っても過言ではないからです。

内功のない太極拳は、もはや太極拳とは言えないかもしれません。

今回は、太極拳の本質である【内功について】考えてみたいと思います。

太極拳の外形と内形

内功についてお話する前に、まず外形と内形について、お話したいと思います。

外形というのは、文字通り、外見の形です。見たままの形と言って良いと思います。

車で言えば、見たままのボディです。

車の写真
車の外形は、箱型

それに対して、内形というのは、内面の形。言い換えれば、内面的な骨格の事です。

車であれば、フレームだったり、タイヤだったり、最低限、その状態を維持できる部品が揃った状態です。

車の車内のイラスト
車内から見れば、フレームなどの車体の骨格が目に付く

ちなみに、自転車の場合は、外形がそのまま内形という事になります。

自転車のシルエット画像
自転車の場合は、外形がそのまま内形となる。

太極拳の内形とは?

では、太極拳にとっての内形とは、どのようなものでしょうか?

単純に人体の骨格かというと、そうではありません。

太極拳の場合には站樁。八卦掌には走圏という練習方法があります。

太極拳の站樁(タントウ)
太極拳の站樁

站樁の場合は、定位置で止まったまま、走圏の場合は、歩きながらですが、どちらも上体は不動で同じ姿勢を維持したまま行います。

八卦掌の走圏
八卦掌の走圏

これらの練習は、何のために行っているのでしょうか?

站樁や走圏には、様々な意味がありますが、初心者のうちにもっとも重視するのは、武術を行うための骨格(骨組み・内形)を作る事です。

武術を行うための骨格は、本来の骨格を基にしますが、伸筋抜骨といって、身体の各関節を開いて、筋(すじ)を伸ばし、全身をつなげ、より明確に使用できるようにしていきます。

八卦掌の順勢掌
八卦掌による伸筋抜骨

シルエットにすると、イメージを掴みやすいかもしれません。

カンフーポーズのシルエット

このように、伝統の太極拳や八卦掌では、站樁や走圏の練習により、まず武術の動きをするのに必要な【内形】を形成していきます。

今回は内形(骨格)について紹介しましたが、外形(型枠)も非常に重要な意味があります。説明は別の機会に譲りたいと思います。

太極拳の内功とは?

では次に、太極拳の内功について説明していきたいと思います。

太極拳の内功とは、上述した内形(武術としての骨格)を身体の内面の動きを使って操作する事を言います。

内功は大別すると3種類あり、またこれらの内功は、実際には密接に連動します。

3種類の内功
  1. 動力源としての内功
  2. 動力を体の末端へと伝達する仕組み
  3. 方向転換や加速を目的とした内功

(1)動力源としての内功

動力源としての内功は、車で言えば、エンジンという事になります。自転車の場合は、ペダルを漕ぐ脚力という事になるでしょう。

エンジンのイラスト
車のエンジン

車のエンジンは、 シリンダー内で、吸気→圧縮→燃焼→排気 といった4つのサイクルを繰り返し行う事によって、動力(圧力、爆発力)を作ります。

実は太極拳の場合も、身体内(特に腹腔内)を膨張させたり、圧縮させたりして、ほぼ同様の方法で圧力を形成します。

言葉で説明すると簡単なようですが、実際には極限の膨張と圧縮を行えるよう、身体の機能を時間をかけて改善していく必要があります。

(2)動力源を体の末端へと伝達する内功

では、次に伝達経路としての内功について説明してみたいと思います。

車の場合は、エンジンで発生させた動力を、まずベルトにつなぎ、そこから様々なギアやシャフトを通じて、タイヤに伝達していきます。

機械の歯車のイラスト
様々な歯車の組み合わせによって力を伝達する

自転車の場合は、ペダルを漕いだ力をチェーンを通じて、同じくタイヤへと伝達します。

太極拳の場合も、(1)で発生させた動力を身体の末端(主として手先)へ伝達させる仕組みを身体の中に作っていきます。

根幹的な仕組みとしては、まず(1)で発生させた動力を上下や前後、あるいは開合動作など、内形と内功を直接的に連動させる練習をしていきます。

この段階では、前述した内形(骨組み)を直接的に操作する感じです。

太極拳の基本功である青龍探爪の写真
前方へと力を伝達する青龍探爪

そして、それらの発展形として、太極拳の套路(型)があります。

陳氏太極拳 乱扎衣の写真
右掌へと力を伝達させる陳氏太極拳 乱扎衣

実は太極拳の套路というのは、内面的には非常に複雑な動きを要求されます。言ってみれば、中級者用の練習方法と言えるでしょう。

(3)方向転換や加速を目的とした内功

3つ目は、(1)や(2)で発生させた動力に方向性を与えたり、加速させる仕組みです。

車で言えば、ハンドルをきる事で、タイヤの向きが変わり、直線するだけでなく、右折したり左折したりと進行方向を変える事ができます。

他にもアクセルを踏むことで加速したり、ギアをバックに入れる事で後退させたりといった様々な仕組みがあります。

車の運転席の写真
車の運転席にはハンドルなど、様々な仕組みがある

自転車の場合も、当然ハンドルがあり、またギアを変える事で加速させるなどの仕組みがありますね。

太極拳の場合は、【雲手】や【野馬分鬣】のように、左右方向への力の転換を構成する技法がありますし、【金剛搗碓】のように上下の切り返し動作もあります。

特に金剛搗碓の場合は、下から右掌を打ち上げた後、内面では、ギアをバックギアに入れて切り返しています。

陳式太極拳 金剛搗碓の動作画像
陳式太極拳 金剛搗碓(スロー)

各動画を見返したい方は、画像を長押し(PCの場合は右クリック)して、【新しいタブで画像を開く】をクリックしてみて下さい。

更に内功の仕組みが出来上がってくると、急激に圧力を高めた上で瞬発力として発する事ができるようにもなります。

車で言えば、急加速ですね。

内功による瞬発力を表現しているGIF画像
内功による瞬発力(青竜探爪)

また、内功による瞬発力を用いた上で、一挙動での上下や左右への切り返し動作(連撃)なども可能となってきます。

ここまで書いた通り、内功というのは、神秘的なものではなく、一言で言えば、身体を機械化する仕組みの事を言います。

その仕組みの構造が、外見からは見ても分かりませんし、基本的には人を選んで教えるので、一般的には神秘的に見えてしまうのでしょうね。

また当然ですが、その仕組みを学んでも、活用できるまでには、長い練功期間が必要になります。

当会の場合は、(1)の動力源や(2)の伝達経路の根幹的なものは一元の基本功にまとめられていますし、(3)に当たる部分は、套路の用法解説などでもお見せしています。

ただし、より効力を高める功法については、やはり人を選んで指導していますね。

套路を学ぶだけでは、(2)の伝達経路の形成は可能かもしれませんが、(1)の動力源や、(3)の部分は、それが伝わっている門派でなければ、習得は難しいように思います。

内功を身に付ける事で何が可能になるのか?

では、この内功を身に付ける事で具体的に何が可能になるのかを紹介していきましょう。

  1. 突発的な瞬発力の習得
  2. 上下や左右方向への切り返し(連撃)
  3. 化勁
  4. 攻防一体
  5. 健康面の充実

順に説明していきましょう。

突発的な瞬発力の習得

身体内の様々な部位が噛み合うようになれば、内功による瞬発力を発する事ができるようになります。

内功による瞬発力の特徴は、全く予備動作を必要としない事です。

一般的には【発勁】と呼ばれているようです。

ただし、陳式太極拳の演武などで行われている一般的な発勁と当会の【内功による瞬発力】は、かなり違うように思います。

陳式太極拳 乱扎衣のGIF画像
内功による瞬発力を用いた陳式太極拳 乱扎衣

武術として太極拳を学ぶ場合は、この段階は、一つ一つの技法を【実際に使える武器】として習得していく段階と言えると思います。

上下や左右方向への切り返し(連撃)

この切り返し動作による連撃は、当門独自の部分かもしれませんが、上述した内功による瞬発力を用いて、一挙動での2~3動作の連撃といった事が可能となってきます。

格闘技的に言えば、コンビネーションという事になりますが、太極拳の場合は一挙動、一つの動作の起こりの中で、2~3手をほぼ同時に行います。

左右の切り返し(雲手)

太極拳の雲手
内功による瞬発力を用いた雲手

上下の切り返し(金剛搗碓)

金剛搗碓の用法例のGIF画像
金剛搗碓(実際の速度)

ここでは、切り返し動作のみ紹介していますが、実際には太極拳の套路に含まれる様々な技法を組み合わせて行う事が可能です。

ただし、内功を伴っていないと、単なる手わざとなってしまうため、注意が必要です。

化勁

太極拳の推手の写真
太極拳の推手

太極拳の化勁というと、一般的には推手などで行われる、相手の攻撃を避ける、あるいは方向を変えると解釈されているようです。

もちろん、それも推手の目的の一つかもしれませんが、当門でいう化勁の場合は、流す、逸らすというよりも、相手の攻撃を正面から受け止めた上で、体内へと分散させます。

ちょうど電気のアース線のように、相手の力を体内を通して、地面へ流したり、あるいは分散させた上で、相手に返したりします。

その特徴としては、相手の【抵抗力を起こさせない】といったところにあります。

推手や対練をやっていると、こちらの動きは止められてしまうのに、相手の動きは止められずに押し込まれてしまう事があると思います。

そういった方は、感覚的に化勁を身に付けてらっしゃるのでしょうね。

残念ながら、化勁に関しては写真や映像で表現しても、体感して頂かないと、分からないと思いますので、実際に学びに来て頂くしかないですね。

攻防一体

武術の理想としては、攻防一体で相手の動きを制御しながら、一方的に相手を倒すというところにあるのだと思います。

もちろん太極拳もそれを目指しますが、実際には相手もこちらを倒しに来る訳ですし、抵抗もする訳ですから、難しいですよね。

当門の場合は、前述した化勁を用いる事によって、相手の動きを一時的に停止させ、そのまま攻防一体の動きに巻き込んでしまう戦術を一つの柱としています。

人間は、押されたら押し返す、引かれたら引き返すといったように、相手の力の方向が分かっていれば、抵抗しようとします。

これが、【化勁】をかけられてしまうと、一時的にですが、力の方向を見失う事になります。

観察してみると、ある程度力を出している状態で、全身が固まってしまう感じです。

なぜ、そうなるのかと言うと、力の方向性を失う事によって、一時的に脳がパニックを起こし、どの方向に力を出して良いのか、分からなくなるからだと思います。

太極拳の場合は、その瞬間にこちらの技の中に巻き込んでいきます。

太極拳 攬雀尾ポン勢の写真
相手の攻撃をポン勢で受ける。

上の写真は、相手の攻撃をポン勢で受ける、あるいは自分から仕掛けた状態です。

この接触時に相手に化勁をかけると、相手は一時的に方向性を見失います。

陳式太極拳 六封四閉の写真
左手にバトンを渡し、右切掌

化勁をかけた状態を維持したまま、左手にバトンを渡し、右切掌(六封四閉)。

陳式太極拳 乱扎衣の写真
そのまま切り返して、右乱扎衣へとつなげる。

そのまま上下に切り返して、右乱扎衣へとつなげます。

動画にすると、以下のようになります。

乱扎衣の用法例
乱扎衣の用法例(実際の速度)

ゆっくりと動くと、このような感じになります。

陳式太極拳 六封四閉から乱扎衣への変化動画
陳式太極拳 六封四閉から乱扎衣への変化(スロー)

各動画を見返したい方は、画像を長押し(PCの場合は右クリック)して、【新しいタブで画像を開く】をクリックしてみて下さい。

いずれにしても、単なる速さだけでなく、化勁によって相手の動きを一時的に封じたり、崩した上で行います。

健康面の充実

ここまでは、内功を身に付ける事によって、武術的にどのような効果があるのかについて紹介してきましたが、最後に健康面について紹介したいと思います。

太極拳を学んでいる、ほとんどの方が健康法として太極拳を学んでいるのだと思います。

ただし、内功を伴わずに太極拳の型を練習していても、実際にはあまり効果が無いようにも思います。

理由は、内形や内功という概念が伴っていなければ、身体が変わっていかないからです。

身体が変わっていかなければ、太極拳はただゆっくりと拳法の型を行っているだけです。

それだけでは、多少足腰が強くなるとか、運動をしたという満足感しか得られないでしょう。

それに対し、まず内形や内功といった概念を持ち、身体を変えていく事を目的とするならば、一般的な運動では動かせない部分から体が動かせるようになっていきますし、功が進むことによって、明らかに力の概念といったものも変わっていくと思います。

その段階に至って、健康法にしろ、武術として行うにしろ、初めて太極拳を活用できるようになります。

内功を身に付ける最大のメリットは?

今回は、太極拳の本質である【内功について】を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

最後に内功を身に付ける最大のメリットについて、お伝えしましょう。

内功とは、【身体を動かす仕組み】と紹介しました。

仕組みである以上は、その仕組みを作ってさえしまえば、無くなることはないという事です。

体力や気力と言ったものは、やはり年齢と共に衰えていくと思います。

私の場合も40代の半ばを過ぎたあたりで、急激な衰えを感じました。

気力や体力が無くなるのであれば、あとは技術という事になるでしょう?

不思議なもので、その頃を境にそれまで養ってきたものが、つながり、噛み合って、内功といったものが少しずつ理解できるようになりました。

体力や力があるうちは、それでどうにかなってしまうので、なかなか気持ちを切り替えられないのでしょうね。

また内功が理解できるようになった事で、実際の太極拳の技戦略、戦術といったものも見えてきました。

内家拳の芽

当会で指導している練習体系を教えてくれた先生が、「内家拳というのは、芽が出るかどうかが一番大事。」と、昔よく仰っていました。

「芽が出なければ、形だけ。」とも、よく言われていました。

最初は先生の形を真似るところから入る訳ですが、いつまでも、それだけではいけないという意味だと思います。

外形を真似るところから、内形を形成し、そこから内功によって動けるようにしていく。

内功といったものは、より細分化される事で、動きが進化していきますし、思考が活性化していきます。

そこから、発想が生まれ、試行錯誤ができるようになります。

ここからが本当の意味での練習の始まりなのかもしれません。

今後も当会は、この内功にこだわった体系を練習していきたいと思ってます。

参考記事

内功については、旧HPの【内功について】のページも併せてお読み下さい。現在とは少し考え方が違うと思います。

楊式太極拳 攬雀尾の画像
楊式太極拳 攬雀尾

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