今回は、太極拳の搂膝拗歩の意味や型の分解動作、また摟膝拗歩や斜行拗歩の用法例について紹介します。
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摟膝拗歩(ろうしつようほ)の意味
摟膝拗歩の搂(ろう)の意味は、太極拳の書籍などでは、摟膝で、膝をなでる、払うなどの意味で訳されている事が多いようです。
用法的には、相手の蹴りを払い、拗歩で推(押)すという解釈がされています。
ただし、摟には他にも以下のような意味もあります。
- (すそや袖などを)まくり上げる。托し上げる。
- かき集める。寄せ集める。
- 引き寄せる。抱き寄せる。
例えば、①の意味では、摟膝で膝を托し上げるの意味となり、実際、古流の摟膝拗歩では、下の写真のように、膝を引き上げた動作をとります。
拗歩の拗(よう)は、順の反対、拗れ(こじれ)という意味です。
拳法的には、前にある手と足がねじれた立ち方。空手で言う逆突きの立ち方となります。
摟膝拗歩で、膝を托し上げ、拗歩で立つといった動作を表しています。
ちなみに斜行は、斜めに行く歩法を指しています。
②のかき集める、寄せ集める。③の引き寄せる、抱き寄せるの意味は、以下の動画をご覧下さい。
一般的には逆雲手と呼ばれる事が多いようです。八卦掌では掩手と言います。
楊式太極拳の摟膝拗歩も陳式太極拳の斜行拗歩も、この圏猿手から各式へと繋ぎます。
名称通り、猿が手で圏(円)を描く動作ですが、この動作を高速で行うと何か物をかき集めているようにも見えます。
具体的な使用方法は、用法例の項で紹介しましょう。
摟膝拗歩と斜行拗歩の動画
楊式太極拳の摟膝拗歩と陳式太極拳 老架式の斜行拗歩の動画を中心に、陳式太極拳 小架式の摟膝拗歩や斜行拗歩を写真で紹介します。
楊式太極拳 摟膝拗歩
楊式太極拳の摟膝拗歩の動画を紹介します。
陳式太極拳 老架式 斜行拗歩
陳式太極拳 老架式では、摟膝拗歩の動作の後に、右手で単鞭の動作を行います。
それ故、斜行単鞭の名称で紹介されている事もあります。
陳式太極拳 小架式の摟膝拗歩と斜行拗歩
勾には、かぎ状の物で引っかけるのような意味があり、拳法的には相手の腕や足を引っかけて固定するなどの意味になります。
具体的な使用法は、用法例で紹介します。
古伝太極拳 摟膝拗歩
古伝太極拳の摟膝拗歩は、歩法は弓歩ではなく三体式に近く、実用時は跟歩します。
摟膝拗歩の型(套路)の分解動作
楊式太極拳 大架式の摟膝拗歩の動作を分解写真で紹介します。
白鶴亮翅(はっかくりょうし)については、こちらのページで解説しています。
この動作が動画で紹介した圏猿手にあたり、搂の意味の②にある「近くにある物をかき集める」動作です。
摟膝拗歩の用法
摟膝拗歩の用法例として摔法(投げ技)を3種と打法を2種、紹介します。
摟膝拗歩の投げ技1
摟膝拗歩を応用した摔法は多数ありますが、ここでは、相手の両腕を交差して巻き込む技法を紹介します。
よく見ると、相手が回転しながら巻き込まれているのが分かると思います。
化勁によって両腕を封じた状態で巻き込みながら投げています。
螺旋勁により、投げられた後に相手が回転しているのが分かると思います。
摟膝拗歩の投げ技2
動画では、足をかけて押し倒しているように見えますが、実際には相手に触れた瞬間に、化勁と螺旋勁をかけ、渦巻き状の力を相手に作用させて崩しています。
摟膝拗歩の投げ技3
相手の蹴りに対しての摟膝拗歩の投げ技を紹介します。
この技法の場合の搂は、相手の膝を托し上げているの意味になります。
摟膝拗歩の打法応用1
※ 払うというよりも、套路(型)の動作通り、圧力をかけて交差します。
最後の極めの部分が拳(掩手捶)になっていますが、基本的な使用法は同じです。
摟膝拗歩の打法応用2
※ 写真では勾手で打ち付けていますが、実際には相手の膝や下腹部をなでるように行い、相手の意識を下に向けます。
この技法は、搂の意味の③にあたる「相手を引き寄せる、抱き寄せる」摟膝拗歩です。
斜行拗歩の用法例
最初にゆっくりと大きく行っているのが、套路(型)の動きです。
次に両手を広げている動きが、内功そのものを動かした動きとなります。
最後に行っているのが、実際の打法としての動きです。
斜行拗歩の打法応用
斜行拗歩の場合は、肘打ちや手刀を用いての打法が特徴となっています。
最初は、肩を押さえられてから、次に肩を押さえられる瞬間に、さらに相手が抑えようと思った瞬間にと、少しづつ発動の速度を上げていきます。
格闘技として活用したい方は、ワン・ツーに対してなど工夫してみるのも良いと思います。
斜行拗歩の投げ技1
斜行拗歩の動作で、左肩を持たれた場合の投げ技を紹介します。
相手の頭部を押さえる際は、押さえつけるというよりも、スライドさせるように行います。
斜行拗歩の投げ技2
この技法では、つかまれた手首から纏絲をかけ、その力を渦巻き状に腕から体へと伝えていき、相手を回転させて崩します。
まとめ
今回は、楊式太極拳の摟膝拗歩や斜行拗歩の意味や型の分解動作、用法例を中心に紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?
摟膝拗歩や斜行拗歩に関しては、相手の手足を絡めとり、固定した上で密着し、とどめを入れる技法と考えて良いと思います。
摟膝拗歩や斜行拗歩には、他にも多数用法例がありますので、定期的に紹介していく予定です。
楊式太極拳や陳式太極拳の他の用法例については、以下のページで紹介しています。興味のある方はご覧下さい。
〇 陳式太極拳の用法例は、【陳式太極拳の技法研究】で紹介しています。
〇 楊式太極拳の技法は、【楊式太極拳の技(用法)】にまとめてあります。
摟膝拗歩と関連の強い、以下の技法もご参考下さい。
摟膝拗歩と対極に位置する技法である陳式太極拳の倒巻肱と楊式太極拳の倒攆猴を比較して考察しています。
摟膝拗歩の前式である白鶴亮翅(白鵝亮翅)の意味や型の分解動作、用法例について紹介しています。
摟膝拗歩の次式である手揮琵琶(しゅきびわ)や提手上勢(ていしゅじょうせい)の意味や用法例について紹介しています。
今回も、最後までお読み頂きありがとうございました。
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初稿 2022年2月14日
第二稿 2022年7月24日