当派に伝わる楊式太極拳の対打套路と技法について紹介します。
楊式太極拳 対打とは
当派に伝わる楊式太極拳 対打は、楊式太極拳の技法を用いた太極拳の対練套路になります。
太極拳の対打套路を伝えている門派はいくつかあり、有名なところでは、陳炎林氏の著書「太極拳刀剣桿散手合編」に太極拳の対練套路が記載されています。
また上海の著名な武術家である沙国政老師創作の対練套路もネットなどで見かける事があります。
私がかつて学んだ陳氏太極拳のある門派でも、独自の対練套路が伝わっていました。
当派に伝わる太極対打も他派で見かけた事がなく、当派独特のものだと思われます。
対練套路の目的と特徴
太極拳の対練套路の目的としては、まず掤、捋、擠、按といった太極拳の根幹的な技法の理解と習得。
次に沾連粘随走といった太極拳独特の攻防技術の習得を目指し、結果的に臨機応変な対応ができる事を目的としています。
その上で、全般を通しての化勁の習得といったテーマもあります。
※ 化勁とは、相手の力を無力化して崩す技術。詳しくは、下記ページをご覧ください。
楊式太極拳 対打の構成
それでは、当派に伝わる対打套路の一段の前半部分を動画で見てみましょう。
気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的には十三勢(套路)の順番で攻守が入れ替わっています。
太極拳 対打の一段の構成は以下の通りです。
- 攬雀尾
- 単鞭
- 提手上勢
- 白鶴亮翅
- 摟膝拗歩
- 手揮琵琶
- 左右摟膝拗歩
- 手揮琵琶
- 左右摟膝拗歩
- 摟膝拗歩
- 搬攔捶
- 如封似閉
- 十字手
では、ここからは各パートごとに見ていきましょう。
攬雀尾
攬雀尾は、楊式太極拳の最重要な技法で、掤、捋、擠、按といった四正手が含まれています。
攬雀尾の詳細は、以下のページをご覧ください。
左右掤勢
掤勢は、一般的には相手の攻撃を上に崩す防御的な技法として認知されていますが、打法としての摔掌(背掌を用いた掌打)や相手が受けた場合は摔法(投げ技)としての使用法もあります。
※ 摔(しゅつ)とは、放る投げるの意。摔掌では、掌を放るように打つの意味。
この部分だけを抜粋して対打として練習する事も可能です。
左右を入れ替える場合は、どちらかが2階続けて攻撃すれば入れ替わります。
捋勢
捋法は、相手の摔掌を受けた後、掤勁から化勁で崩し、引き倒す技法です。
擠勢
擠勢は、捋で引き崩された際に、逆に前に出て密着し、相手の動きを封じる技法です。
按勢
按勢は、擠勢で密着してきた相手の両手を交差して封じる技法になります。
実用時には、この態勢のまま、膝蹴りや頭突きなどに変化します。
ここまでの一連の動きは、当派の四正推手の流れになります。
当然ですが、この部分だけを抜粋した場合は、四正推手の練習となります。
四正推手について詳しくは、以下のページをご覧ください。
単鞭
楊式太極拳の単鞭は、四正推手による攻防を打ち破る技法です。
按勢によって両手を封じられた状態から、双圏手で相手の両手を巻き込み、体幹部で発生させた螺旋勁を相手に作用させます。
手を使って投げるのではなく、体幹部で発生させた螺旋勁を作用させて崩します。
単鞭の詳細は、以下のページをご覧ください。
提手上勢
提手上勢は、右手を上に引き上げた姿勢となります。
太極対打における提手上勢は、単鞭に対しての返し技で、足を換歩して相手の後ろに回し、髪の毛や顎をつかんで後方に引き倒します。
動画では、安全性を考慮し、肩を押さえて崩しています。
白鶴亮翅
白鶴亮翅は、白い鶴が両手(羽根)を展開する動作ですが、対打では提手上勢の右腕を上にはね上げる動作です。
使用例としては、はね上げた後に相手に密着し、左肩から螺旋勁を発して崩すなどがあります。
白鶴亮翅については、以下のページで解説しています。
摟膝拗歩
太極拳対打における摟膝拗歩は、白鶴亮翅で相手の右腕をはね上げた後、左手で相手を捕らえ、掌打を打ちます。
摟膝拗歩については、以下のページをご覧ください。
手揮琵琶
手記琵琶は、琵琶を抱えるような構えです。
楊式太極対打の手揮琵琶は、摟膝拗歩に対しての返し技で、動画では紹介されていませんが、相手を捕らえた状態で腹部を蹴る蹬脚が含まれています。
手揮琵琶については、以下のページで紹介しています。
左右摟膝拗歩
左右摟膝拗歩は、十三勢(套路)では、摟膝拗歩を繰り返す動作ですが、対打では手揮琵琶からの蹬脚に対しての返し技です。
ここから対打の套路では、摟膝拗歩 → 手揮琵琶 → 左右摟膝拗歩 → 摟膝拗歩 と攻守入れ替わっての構成となります。
搬攔捶
搬攔捶にも色々な用法があるのですが、対打の套路では摟膝拗歩に対しての返し技となっています。
ここから攔勢で相手を捕らえるなり、様々な用法があるのですが、ここでは単鞭に変化し、相手の受けを誘う用法例を紹介します。
この後の如封似閉は、搬攔捶からの変化としても使えますし、搬攔捶の返し技としても使用できます。
十字手は、如封似閉に対しての如封似閉として使用し、そこから左右入れ替わって、一段を最初から練り直す形となります。
まとめ
今回は、当派に伝わる楊式太極拳の対打套路の一段について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。
楊式太極拳 対打は、本来は教室で公開するつもりはありませんでした。
ただ、このまま寝かせておいて失伝するのもどうかと思い、私の判断で今年(2024年)から一段のみ公開しました。
当派では、四正推手の発展形という立ち位置で、太極拳の全ての技法を四正手(掤、捋、擠、按)を用いて防げるようになった後、それらを突破するために習います。
二段以降は、対練が中心となりますが、生徒達の習熟度をみて指導するかどうかを決めたいと思います。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
当会に興味を持たれた方は、【湧泉会の特徴】のページをご覧下さい。
当会での学習を希望する方は、受講案内のページにお進み下さい。
当記事と関連の深い以下の記事もよろしければ、ご参考下さい。
太極拳 対打の前に学ぶ 四正推手について解説しています。
太極拳の推手全般について紹介しています。
太極拳の化勁について、多くの検証例を基に解説しています。
ブログランキングに登録してみました。
記事が参考になった方は、応援して頂けると幸いです(^人^)