陳式太極拳の各技法の套路(型)の動きと、用法例(打法、摔法、擒拿)を紹介しています。
※ 摔法は投げ技、擒拿は関節技の意。
Contents
懶扎衣(らんざつい)
懶扎衣は、陳式太極拳の第一手にあたる技法であり、纏絲勁を用い、右掌へ勁を集中します。
古い拳譜では、懶は攬の文字が使われている事もあり、攬扎衣で、相手の衣服を束ねて拘束し、引き寄せるなどの意味となります。
懶扎衣の摔法
懶扎衣の用法例として、摔法(しゅつほう)を紹介します。
摔(しゅつ)とは、放る、投げるという意味です。
相手の衣服を絡めて引き寄せ、開の螺旋勁(らせんけい)を用い、自分の動きに相手を載せるように投げます。
螺旋勁は、大地との接地面から発生させる渦巻き状の力の事です。
懶扎衣の打法
懶扎衣の扎には、束ねるなどの意味の他に、ぶすっと突き刺すのような意味があります。
その場合は、攬扎衣で、相手の衣服を引き寄せて打つといった意味となります。
懶扎衣の套路(型)の動きは、ゼンマイ仕掛けのように纏絲勁を発生させる仕組みとなっています。
陳式太極拳は、この懶扎衣の掌打を当てるために、他の技法で撹乱、捕捉し、右掌を打ち込むのを戦術の第一歩としています。
懶扎衣の型の分解動作や戦略や戦術、他の用法例については、【懶扎衣の研究】のページをご参考下さい。
六封四閉(ろくふうしへい)
六封四閉は、古い拳譜には名称がなく、本来は単鞭への過渡動作であったようですが、次第に懶扎衣の変化としての意味を持つようになりました。
六封四閉の摔法
先に紹介した懶扎衣の摔法で相手の抵抗が起きた場合は、素早く捋(リー)へ変化し、逆に内側に巻き込んで投げます。
六封四閉の推撃
同じく先に紹介した懶扎衣の摔法に入れなかった場合は、歩法を用いて推撃します。
押す事自体に意味はありませんが、足元に段差などがあった場合は、相手は転倒する事になります。
六封四閉の打法
六封四閉には打法としての意味も多数ありますが、ここでは、懶扎衣からの変化として、【撞掌】を紹介します。
上段を狙う懶扎衣に相手が反応した場合は、逆纏絲をかけ、相手の腹部へ潜り込むように、掌を打ちます。
その他、六封四閉には多種多様な用法例があります。詳しくは、【六封四閉の研究】のページをご参考下さい。
単鞭(たんべん)
単鞭は、文字通り「単(ひとえ)の鞭」、単独の鞭、片手の鞭という意味です。
太極拳の伝統套路(型)の中で、もっとも登場回数の多い技法であり、太極拳を代表する技法です。
単鞭の摔法
通常は、螺旋勁を用いても相手は抵抗しますが、抵抗できずに急に崩れているのが分かると思います。
この相手の抵抗を無にするのが化勁の技術です。また螺旋勁が作用しているため、崩れた後も相手は回転していきます。
双圏で相手の両腕を巻き込み、密着して開の螺旋勁を用います。
体の一部分が相手に接触していれば、螺旋勁が作用し、相手は崩れていきます。
単鞭の擒拿法
手首を持たれた場合は、接触点から纏絲をかけ、相手が前のめりになったら、頭部に接触し、逆方向へと螺旋をかけます。
動画で見ると、強引に相手の頭を押さえているように見えますが、実際は螺旋勁を用い、相手を回転させて崩します。
螺旋勁がないと相手の抵抗が起き、強引にかけると、受け手が首を痛めてしまうので、注意して下さい。
※ 当サイトで紹介した技法を使用して、ケガや事故が起きても、当会は一切責任を負いませんので、ご注意下さい。
単鞭の打法
ここまで、単鞭の摔法(投げ技)や擒拿(関節技)を紹介しましたが、単鞭と言えば、やはり「鞭(むち)」としての打法があります。
単鞭は、大地との接地面で生じたらせん状の力をロスなく、左手の鞭へと伝達する打法です。
単鞭の型の分解動作や他の用法例については、【単鞭の研究】のページをご参考下さい。
金剛搗碓(こんごうとうたい)
金剛搗碓は、陳式太極拳の開門式であり、見た目からも陳式太極拳を代表する技法です。
金剛搗碓の打法
その他、金剛搗碓には多種多様な応用例が存在します。
金剛搗碓の型の分解動作や他の用法例については、【金剛搗碓の研究】のページをご参考下さい。
白鶴亮翅(はっかくりょうし)
白鶴亮翅は、白い鶴が翼をパッと広げるという意味です。縦の螺旋勁を用い、両腕を展開します。
白鶴亮翅の摔法
白鶴亮翅の摔法は、前述した懶扎衣の摔法の応用で、懶扎衣では、水平に螺旋勁を作用させますが、白鶴亮翅の場合は縦の螺旋勁を用います。
懶扎衣の摔法と見比べると、相手の崩れ方が違うのが分かると思います。
白鶴亮翅の推撃
陳式太極拳 小架式の 白鵝亮翅(はくがりょうし)を応用した推撃を紹介します。
前述した六封四閉の推撃では、前方45度に按出しますが、白鵝亮翅の場合は、ほぼ真横に按出します。
側面に壁がある場合や、敵がいる場合は、投げつけて活路を見出します。
白鶴亮翅の打法
白鶴亮翅の打法には、大別すると二種類ありますが、ここでは右手刀を用いた劈掌を紹介します。
白鶴亮翅と懶扎衣は、套路でも技法でも途中までの動きは同じですが、最後のインパクト部分で別の技法に変化します。
白鶴亮翅の型の分解動作や他の用法例については、【白鶴亮翅の研究】のページをご参考下さい。
斜行拗歩(しゃこうようほ)
陳式太極拳の斜行拗歩は、斜行単鞭とも呼ばれ、楊式太極拳の摟膝拗歩の後に右の単鞭の動作が加わっています。
斜行拗歩の摔法
斜行拗歩(単鞭)の摔法としては、前半の摟膝拗歩の動きを用いたもの、後半の単鞭の部分を用いたものがあります。
ここでは、後半部分を用いた技法を紹介します。。
この技法では、つかまれた手首から纏絲をかけ、その力を渦巻き状に腕から体へと伝えていき、相手を回転させて崩します。
斜行拗歩の打法
最初にゆっくりと大きく行っているのが、套路(型)の動きです。
次に両手を広げている動きが、内功そのものを動かした動きとなります。
最後に行っているのが、実際の技法としての動きです。
最初は、肩を押さえられてから、次に押さえられる瞬間に、さらに相手が抑えようと思った瞬間にと、少しづつ発動の速度を上げていきます。
格闘技として活用したい方は、ワン・ツーに対してなど工夫してみるのも良いと思います。
斜行拗歩の型の分解動作や他の用法例については、【摟膝拗歩と斜行拗歩】のページをご参考下さい。
掩手捶(えんしゅすい)
掩手捶の掩には、覆う、かぶせるなどの意味の他に閉じる、閉ざすなどの意味があります。
両手の2台の草刈り機が、草を巻き取り、刈り取るような動作です。
掩手捶の打法応用
BGM入りなのは、途中で救急車のサイレンが鳴っていたからです(^_^.)
陳式太極拳の掩手捶と楊式太極拳の進歩搬攔捶の比較や用法例など、掩手捶の詳細は、【掩手捶と搬攔捶】のページをご覧ください。
背折靠(はいせつかお)
この動画では、体内で発生させた螺旋勁を肘に通しての開勁を表現しています。
背折靠による靠法
この動画では、相手の両手を開いて崩し、左肩での靠(体当たり)を行っています。
倒巻肱(とうけんこう)
陳式太極拳 老架式の倒巻肱は、圏猿手(逆雲手)で相手の攻撃をさばきながら、ジグザグに後退する技法です。
また、猿が引っ搔くように、相手の顔面をはたく【拍掌】という打法も含んでいます。
陳式太極拳 新架式の倒巻肱は、下方に圧する意識と身体を開く動作を用い、纏絲勁を発生させます。
陳式太極拳の倒巻肱と楊式太極拳の倒攆猴の比較や用法例など、倒巻肱の詳細は、【倒巻肱と倒攆猴】のページをご覧ください。
まとめ
今回は、陳式太極拳の技法の用法例として、打法、摔法、擒拿について紹介してみましたが、いかがだったでしょうか?
そもそも中国武術の技法や用法例は、各個人の体格や体質によって異なるので、一つの参考として頂ければ幸いです。
やはり陳式太極拳の特徴は、螺旋勁(らせんけい)と纏絲勁(てんしけい)にあり、螺旋や纏絲を用いた技法が多用されます。
今回、未掲載の技法は、改めて掲載しますので、定期的にこちらのページをご覧下さい。
当会に興味を持たれた方は、【湧泉会の特徴】のページをご覧下さい。
当会での学習を希望する方は、受講案内のページにお進み下さい。
今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
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